反バンビ症候群
何を、誰が、どんなふうに?

 第一発見者はこれを、早朝の散歩で見つけたそうだ。引っ越しから間もない頃でもあり、「この先公園あり」という部分にまず目が止まった。ふーん、近くに公園があるなんて素敵じゃない。雰囲気のいい所なら今度は家族と行ってみようかな、と。
 しかし次の瞬間、彼女の頭は疑問符でいっぱいになってしまった。その下に、色まで変えて強調された「注意」の文字。「注意」ってなに? 公園があると、なぜ、誰が、どんなことを注意しなきゃいけないというんだろう?
 静かな住宅街という環境と看板の主が警察ということから推察するに、「この先(の)公園(で遊んでいる子どもが急に飛び出すことも)あり、(ドライバーは前方に)注意 (するように)」の省略形ではないかと解釈も出来る。「公園」の部分がもし幼稚園や病院だったら、この省略過多で意味不明な標語も意外とすんなり頭に入ったのではないだろうか。
 しかし、ここに「今のご時世」というファクターを加えてみるとあーら不思議。この標語は、まったく違った顔を見せてくるのだ。
 閑静な、ということは日中でも人けのない住宅街。そこに古くからある公園。緑はこんもり繁っているだろう。遊具は古びて子どもたちには見向きもされず、かわりに正体不明な人影が増えたかもしれない。暗がりに乗じてチカンが潜むとの噂もありそう。ただし警察としては何か問題が起きないかぎり手出しは出来ないため、せめて「この先(の)公園 (にはアブナイ人がいることも)あり、(子どもや女性のひとり歩きは)注意(しましょう)」と呼びかけている―― とまあこんな深読みも出来るのではないかと。
 第一の解釈の方が牧歌的ではあるし、たぶん当初の目的としてもそちらの意味で立てられた看板だったのではないかと思う。しかし第二の意味もそれはそれなりに納得出来てしまうのが、今のニッポンだったりしないだろうか。
 公園があるから注意。そんな世の中に今、わたしたちは生きている。
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